白紙に署名しただけだという賃借人の主張にもかかわらず、裁判所は合意書の効力を認めました
事件の概要
依頼人は自分の建物の一部を飲食店用として賃貸していました。ところが原因不明の火災で賃貸部分の大半が焼失して使用できなくなり、依頼人は建物を取り壊して新築しました。火災後、双方は保険金の受領に関する合意書を作成しましたが、その後、保証金・貸付金・保険金の配分をめぐって争いが生じました。賃借人が先に保証金など約1億4千万ウォンを請求し、依頼人は反訴(同じ訴訟の中で相手方に逆に請求すること)で対応しました。
争点
賃借人は、施設物保険金の半額を依頼人に支払うとした合意書について、白紙の状態で署名しただけで、内容は依頼人が勝手に書き込んだと主張しました。この合意書に効力があるかが最大の争点でした。そのほか、賃借人が主張する修理費精算の約束や貸付金が実際にあったか、保証金から未払賃料や火災による損害をどこまで控除できるかも争われました。
弁護士の対応
依頼人側は、賃借人自身が署名・押印した合意書とそれを裏付ける資料を提出し、賃借人が受け取った施設物保険金の半額の支払いを求めて反訴しました。また、保証金からは未払賃料と火災後に賃貸できなかったことによる損害を控除すべきだと主張し、賃借人の言う修理費精算の約束や現金の貸付はなかったと争いました。
裁判所の判断
裁判所は、本人が署名・押印を認めた文書は完成した状態で署名されたものと推定され、これを覆すには合理的な理由と証拠が必要だという大法院判例を適用しました。署名の位置、合意書に添付された印鑑証明書、保険会社に提出した別の確認書と内容が一致する点などを挙げ、白紙署名の主張を退けました。修理費精算の約束は証拠がなく、賃借人自身の営業のための費用とみられるとして棄却し、現金で貸したという部分も認めませんでした。保証金からは未払賃料と復旧期間中の賃料相当損害を控除しました。ただし、取壊費用・廃棄物処理費用は控除の対象とせず、口座で送金された一部の金額は貸付金と認めました。
結果
裁判所は、賃借人に対し、施設物保険金の半額である約1億3,500万ウォンと遅延損害金を依頼人に支払うよう命じました。依頼人が賃借人に支払う額は、請求された約1億4千万ウォンのうち、控除後の保証金と一部の貸付金を合わせた約6,100万ウォンにとどまりました。訴訟費用は賃借人が4分の3、依頼人が4分の1を負担することとされました。
この事例の意味
火災のような予期せぬ事故の後は、保証金、保険金、それまでにやり取りした金銭が一度に絡み合いがちです。署名・押印された合意書は、後になって「白紙に署名した」と争われても容易には効力を否定されません。事故直後に精算内容を書面に残し、関係資料をそろえておくことが重要です。
個別の事件の結果であり、類似の事件で同じ結果を保証するものではありません。当事者保護のため、事実関係の一部を一般化しています。
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